古川 勇気 (FURUKAWA, Yuki)
ステイタス
博士課程
連絡先
rising-sun02[a]hotmail.co.jp
研究課題
ペルー北部山地における農民と市場経済の関係性に関する人類学的研究
研究関心領域
経済 生態・資源利用 移民・移住 物質文化
対象地域
ペルー、カハマルカ県
研究内容
南米ペルー共和国の北部山地に位置するカハマルカ県は、国内有数の酪農地帯である。そのため各山村の多くの農民世帯では、ジャガイモやトウモロコシを栽培する農業を基調とされながら、同時に、乳牛を中心とする家畜飼育がおこなわれている。大半の農民は早朝に乳牛から搾乳をおこない、彼らの一部には、近隣から牛乳を買い取ってチーズを生産して販売する者もいる。そうでなくとも、自ら簡易な生産方法でチーズを加工して、地域マーケットで販売する者もいる。
そのような農民たちにとって、村の中での近隣農民との社会関係は生活のために維持すべきものであり、共有される価値や慣習は守るべきものである。一方、彼らにとって、市場経済の領域は、世帯の必需品を補填するためのものだけでなく、多くの利益を得るために試行錯誤したり交渉したりする領域である。そのような村の中で調和を重んじて「良き村人」として振る舞うことと、市場経済の領域において利己的に交渉することは、一見すると、相反する行為のように思える。
そこで、山村と市場経済という異なる領域の様相と、その両領域を結び付けてチーズを生産販売する農民の苦労と巧みさを描くことを目的として、具体的には、彼らがどのように都市向けチーズを生産販売して生計を立てているのか、彼らがどのように山村と市場経済を結び付けているのか、を追究している。
研究業績
学会・口頭発表
2010年3月 「男女の役割分担からみる農民の経済メカニズム-ペルー、カハマルカ県、ラ・エンカニャーダ小盆地の農民を事例として-」 日本文化人類学会関東地区懇談会・博士論文修士論文発表会、於・東洋大学
2010年10月 「農民の戦略的意図性の変化と特徴-ペルー北部山地酪農地域の小村落チャンタ・アルタの社会変化を事例として-」 第73回現代人類学研究会「市場経済と人類学」、於・東京大学
2011年2月 「農民の戦略的意図性の変化と特徴-ペルー北部山地酪農地域の小村落チャンタ・アルタの社会変化を事例として-」 第53回アンデス牧畜研究会、於・東京大学
2011年10月 「地域マーケットと農民の戦略-カハマルカ県、チャンタ・アルタ小村落を事例に-」 第1回アンデス・アマゾン研究集会、於・東京大学玉原国際セミナーハウス
2013年1月 「生産技術と品質-ペルー、カハマルカ県のチーズ販売戦略を事例として」早稲田文化人類学会 第14回総会、於・早稲田大学
2013年12月 'Las Estrategias Economicas de los Queseros en la Provincia de Hualgayoc, Cajamarca, por la Atención de “Cosas”, “Personas” y sus Relaciones.' ペルー、カハマルカ大学 招待講演、於・ペルー、カハマルカ県
2014年5月 「酪農家の生存戦略と地域開発 ペルー、チャンタ・アルタ村落におけるITDG の影響を事例に」日本文化人類学会 第48回研究大会、於・幕張メッセ
2014年10月 「飛び込んで、体験して、支えられたフィールドワーク-ペルー、カハマルカ県のチーズ販売網における多様な経済活動の中で-」第10回松下幸之助国際スカラシップフォーラム、於・東京大学弥生講堂
2017年5月 「チーズのゆくえ ペルー北部酪農地域の仲買人の取引を事例に」日本文化人類学会 第51回研究大会、於・神戸大学
2017年10月 「顔の見える日常的関係に.基礎を置くチーズ経営-ペルー、カハマルカ県山村の生産者と近隣農民の付き合いから-」白山人類学研究会、於・東洋大学
論文
(査読有り)
2014年 「ペルー、カハマルカ県におけるチーズ生産者の販売戦略 -経済合理性の広い可能性を目指して-」『超域文化科学紀要』第19号、pp.81-100。
2018年 「利益追求と村での協調意識-ペルー,カハマルカ県のチーズ生産者の実践を事例に-」『白山人類学』第21号、pp.173-198。
2018年 「ペルー北部山地のチーズ技術供与における開発支援者の期待と農民の実践」『文化人類学研究』第19巻(印刷中)。
(査読無し)
2017年 「取引関係の固定的から一回性への移行―ペルー北部山村のケシーリョ市場における売買を事例として―」『地域政策研究』第20巻、4号、pp.39-58。
書評
報告書
学位論文
2008年1月 「インカ国家における周辺地域への統合戦略-ハウハ地域とワヌコ地域を事例として-」 埼玉大学教養学部 文化人類学専攻提出 卒業論文
2010年1月 「男女の役割分担からみる農民の経済メカニズム-ペルー、カハマルカ県、ラ・エンカニャーダ小盆地の農民を事例として-」 埼玉大学大学院 総合文化研究科提出 修士論文
その他
2015年 単著 『ペルー山村のチーズ生産者 暮らしの中の経済戦略』風響社。
2010年 共著 『埼玉大学文化人類学ことはじめ』埼玉大学文化人類学ことはじめの会。
2007年 共著 『埼玉サッカー100周年記念展示図録』さいたま市立浦和博物館・埼玉県立歴史と民俗の博物館・埼玉大学。
調査歴
2010年8月~9月 ペルー、カハマルカ県、カハマルカ郡にて、調査対象地域選定のための予備調査
2012年3月より2年間(予定) ペルー、カハマルカ県にて、農民の世帯戦略に関する調査
2015年2月~3月 補足調査
2017年8月~9月 チーズの価値に関する食文化研究
教育歴
2008年10月~2009年2月 埼玉大学教養学部 ティーチングアシスタント
2010年10月 東京大学総合博物館 資料・データ整理
2015年4月~ 山梨大学 非常勤講師
2016年4月~2018年9月 大妻女子大学 非常勤講師
2017年4月~ 東洋英和女学院大学 非常勤講師
2017年4月~ 高崎経済大学 非常勤講師
2018年4月~ 駿河台大学 非常勤講師
経歴
2008年3月 埼玉大学 教養学部 卒業
2008年4月 同大学大学院 修士課程 進学
2010年4月 東京大学大学院 博士課程 入学
2018年3月 同大学大学院 単位取得満期退学
研究助成/その他
2010年度 東京大学博士課程研究遂行協力制度
2011年度 松下幸之助記念財団 松下国際スカラシップ
2014年度 澁澤民族学振興基金 大学院生等に対する研究活動助成
2016年度 味の素食の文化センター「食の文化研究助成」
備考
2018年7月現在