土田 亮(TSUCHIDA, Ryo)
ステイタス 日本学術振興会・特別研究員PD
連絡先 tsuchida.ryo.74[at]gmail.com
研究課題 水害に抗する生存戦略とレジリエンスの歴史的変遷の解明:スリランカの事例から
研究関心領域 災害復興、レジリエンス、多元性、ケア、災害と臨床、環境とモノと産業の連関
対象地域 スリランカ、日本(九州・北陸)
研究内容
研究関心は、地域固有の文化や経験、知恵といった在来知が結びついた地域のレジリエンス(=回復力)はどのような歴史的変遷を経て構築されてきたかという点にある。気候変動や地球温暖化の影響の一つとして水害が頻発・激甚化する今日、次の災害に対応するために歴史や文化、人々の暮らし、環境、知恵の価値を記述し、意義を総合的に見つめ直し、災害におけるレジリエンスのありようを探究することが、未来の不確定な時代を生きること、さらには今、ここで生き抜くことの臨床的な哲学・倫理の指針になりうる。
本研究の目的は、スリランカの水害常襲地における防災技術・制度と生存戦略、レジリエンスとの相互作用から、その歴史的変遷を明らかにすることである。水害常襲地であるスリランカ国ラトゥナプラ県ラトゥナプラ市での現地調査と文献調査より、生存戦略とレジリエンスの諸相を解明することを通じて、スリランカの防災技術・制度がいかに歴史的に地域や人びとに積層してきたレジリエンスや生存戦略と絡まり合い、災害復興の多元性を形成したかを考察する。さらに、人間と自然環境との相互作用が著しく変容したオランダ・英国植民地下の時代から、気候変動や水害、政情不安、開発が社会経済や生活や産業に影響する現代スリランカ、宝石産業までも分析対象に入れることで、生存戦略の展開とその過程における技術や制度、アクターの導入/普及/変容を伴う相互作用を考究する。
また、令和元年・令和3年九州北部豪雨で立て続けに被災した佐賀県武雄市、地元であり幼少の頃に台風を被災した宮崎県宮崎市のニュータウン、2024年元日に起こった能登半島地震の被災地(石川県七尾市など)でも調査を続けている。今日さまざまな問題に直面し葛藤する災害頻発地域で生きること、はじめて/再び被災すること、リスクの高い地域や被災地から移動すること/移動しないことの選択した行為と意志、技術や制度、場、アクターが動員されていくことを通じて調整される災害復興におけるケアのあり方とは何か。それを提示することがこれからの私たちの生存のありように何を加えることになるのか。具体的な人びとや経験、関係性、モノ、語り、実践、自らの身体・情動的な経験の記述とともに考える。
研究業績
学会・口頭発表
土田亮「災害復興の多重性:スリランカ・ラトゥナプラ市の洪水復興の聞き書きと能登半島地震の災害ボランティア実践との重ね書きから」日本南アジア学会第37回全国大会、国立民族学博物館(大阪)2024年9月.
東詩歩、土田亮「ままならなさと倫理:能登半島震災の復興支援をめぐるポジショナリティと記述の困難さ」第2回オートエスノグラフィーと詩的探究フォーラム、立命館大学(大阪)/オンライン ハイブリッド 2024年9月.
Ryo Tsuchida, "Logic of care in inter-disaster phase: Managing a civilian disaster volunteer center at water-related disaster-prone area in Japan" 14th IDRiM Conference, Cartagena, Colombia, August 2024.
Ryo Tsuchida, "From Creating a Resilient Society to Caring for a Resilient Society: A Case Study of Civilian Disaster Volunteer Center and Local People in Takeo City, Saga Prefecture, Kyushu Region, Japan" EASST-4S 2024 conference, Amsterdam, Netherlands. July 2024.
土田亮「洪水の街を生きるオルタナティブなロジック:スリランカ・ラトゥナプラ市における宝石産業の調査に向けた予備検討」海域アジア・オセアニア研究プロジェクト(MAPS)第1回若手研究者集会「アジア・オセアニアから考える移動・災害・海域社会」東洋大学白山キャンパス(東京) 2024年1月.
土田亮「ケアする災害復興に向けた素描:災害復興とフィールドの見方・書き方の別様をめぐって」日本災害復興学会2023年度静岡大会(静岡) 2023年12月. ほか
論文
(査読有り)
土田亮、清水美香「複合連鎖災害を考慮した事前復興とレジリエンスのあり方の検討-佐賀県武雄市を事例に-」『日本災害復興学会論文集』24号、pp.56-67, 2024.
土田亮「課題解決型研究の態度に関する考察:公共と災害の人類学との対話から」『総合生存学研究』4号、pp.101-106, 2024.
Ryo Tsuchida. Rethinking Resilience against Disaster: A Case Study of 1913 Flood Disaster Rehabilitations in Ratnapura City, Sri Lanka. Proceedings of the International Conference on Disaster Risk Reduction and Climate Change 2023. pp. 4-10. 2023.
土田亮、寶馨「水害常襲地における住民の対応と復興に関する実態と課題に関する調査研究 -スリランカにおける豪雨洪水災害を事例に-」『日本災害復興学会論文集』18号、pp. 21-32. 2021. ほか
(査読無し)
土田亮「災間期におけるケアのロジックの試論:いかに主体を継ぎはぎするか?」『2023 年度日本建築学会大会(近畿) 多元性に着目した復興再考[若手奨励]特別研究委員会 パネルディスカッション資料 若手研究者による「復興」再考ー多元性の理解に向けてー』pp. 55-58. 2023. ほか
書評
湖中真哉, グレタ・センプリチェ, ピーター・D・リトル 編『レジリエンスは動詞である』 、『アジア・アフリカ地域研究』24巻2号(印刷中)、2024.
大谷順子 編『『四川大地震から学ぶ:復興のなかのコミュニティと「中国式レジリエンス」の構築』、『文化人類学』89巻1号、pp. 137-139, 2024.
早川公『まちづくりのエスノグラフィ --<<つくば>>を織り合わせる人類学的実践』、『文化人類学』88巻2号、pp. 380-382. 2023.
清水展『噴火のこだま--ピナトゥボ・アエタの被災と新生をめぐる文化・開発・NGO』、『アジア・アフリカ地域研究』21巻2号、pp. 293-296. 2022.
報告書
「すべての人に“我が家”と呼べる場所を」 国際連合人間居住計画. 2022年7月.
Scoping Study on Compound, Cascading and Systemic Risks in the Asia Pacific. United Nations Office for Disaster Risk Reduction. 2022年4月. ほか
学位論文
土田亮「災害への適応からレジリエンスの創造へ-スリランカの水害常襲地ラトゥナプラ市の事例から-」(京都大学博士論文)
その他
(書籍・共訳)
「大陸性」「大陸性気候の季節変化と文化」「亜寒帯と北西海岸の先住民住居/北米」「著者略歴」、『世界居住文化大図鑑ー人と自然の共生の物語』(サンドラ・ピシク編著、本間健太郎・前田昌弘監訳)柊風舎. 2023.
(書籍・分担執筆)
土田亮「開発と災害復興と総合生存学」「レジリエンスと総合生存学がつなぐもの」『実践する総合生存学』(池田裕一編著)京都大学学術出版会. 2021.
(エッセイ)
土田亮「ケアする災害復興に向けたモノとの関係性:石川県七尾市中島町での民間災害ボランティアセンター支援を通じて」、『都市計画』369号(緊急特集号/2024 年能登半島地震からの復興に向けて), pp.130-131, 2024.
土田亮「宝石と洪水の街で生きる」、『アジア・アフリカ地域研究』19巻2号、pp. 269-273. 2020. ほか
調査歴
2024年2月〜 日本・石川県七尾市・珠洲市(断続的に調査)
2023年8月〜 日本・宮崎県宮崎市(断続的に調査)
2020年2月〜 日本・佐賀県武雄市(断続的に調査)
2018年1月〜 スリランカ・サバラガムワ州ラトゥナプラ県ラトゥナプラ市(断続的に調査)
教育歴
2024年12月 東洋大学国際学部 ゲスト講師(担当科目:「文化人類学」 子島進先生)
2024年4月 明治大学情報コミュニケーション学部 ゲスト講師(担当科目:「情報コミュニケーション」小林秀行先生 オムニバス1コマ ゲスト講師)
2024年4月〜 立命館大学政策科学部 授業担当講師(担当科目:「コミュニティ防災論」分担 5コマ)
2023年8月・2024年3月・2024年8月 公益財団法人国際高等研究所 IIAS塾ジュミアセミナー, TA
2023年4月〜 大阪国際大学 非常勤講師(担当科目:「文化人類学入門」)
2019年9月〜2023年3月、2024年9月〜 京都大学 高大連携事業 学びコーディネーター(担当科目:「文系と理系の間」「災害を防ぐ、読む、待つ」)
2019年2月〜2019年3月 University Social Responsibility Network, TA(フィールド演習、国際研修)
経歴(主要な経歴を抜粋)
2024年5月〜現在 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 環インド洋地域研究プロジェクト・東京大学拠点(TINDOWS)研究協力者
2024年5月〜現在 一般社団法人地球社会レジリエンスセンター フェロー
2024年4月〜現在 スリランカ・ペラデニヤ大学 地理学部 Visiting Postdoctoral Researcher
2023年10月〜現在 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員PD
2023年9月 京都大学博士(総合学術)取得
2022年4月〜2023年3月 公益財団法人国際高等研究所 特任研究員
2022年3月〜2023年3月 国際科学技術協力基盤整備事業 日本-米国研究交流
「レジリエンスに基づく事前復興のためのガバナンス枠組みと実践モデル -複合災害に焦点を当てたシステムズアプローチ-」, RA2022年3月〜2022年8月 国際連合人間居住計画 アジア太平洋部門福岡本部 Research & Advocay (Intern)
2021年4月〜2023年3月 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員DC2
2021年12月〜2023年3月 スリランカ・ペラデニヤ大学 人文社会科学研究所 Casual Student(コロナ禍期間を含む)
2017年4月〜2023年3月 京都大学大学院総合生存学館総合生存学専攻 5年一貫制博士課程 研究指導認定退学
2013年4月〜2017年3月 九州大学 21世紀プログラム卒業
受賞
2022年1月 学生ワークショップ 異分野融合部門 優秀賞 土田亮, 大川采久, 森聖太.
「過酷環境・極端現象から生存するための素材・システムが駆動するデジタル防災社会の構想」, 大学院教育改革フォーラム2021.2022年1月 学生ポスター発表 社会と知の統合部門 優秀賞 土田亮.「災害を契機に私たちは生きる」, 大学院教育改革フォーラム2021.
2024年7月 academist Prize第4期 土田亮. 「取るに足らない私たちの日常を見つめ直すための別様の災害研究に向けて」, アカデミスト株式会社.
2024年8月 Bronze Prize Young Scientist Award in Young Scientist Session, Ryo Tsuchida for "Logic of care in inter-disaster phase: Managing a civilian disaster volunteer center at water-related disaster-prone area in Japan", in The 14th International Conference of the International Society for the Integrated Disaster Risk Management.
研究助成/共同研究/その他
2024年10月〜現在 クリタ水・環境科学振興財団 2024年度 国内研究助成 人文・社会科学
「流域治水をめぐる科学技術社会と人と自然の関係性とその再編の探究:佐賀県武雄市を対象に」2024年7月〜現在 日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 「主観・客観統合型アプローチによる学際研究展開システムの構築」
(研究代表者:桑島修一郎、京都大学生存圏研究所) 研究分担者2024年7月 公益信託澁澤民族学基金 2024年度国際研究集会参加費助成(EASST-4S 2024 conference @Amsterdam, Netherlandsでの発表に対して)
2024年4月〜現在 京都大学防災研究所 令和6年度共同研究 萌芽的共同研究「日常と災害のあいだにおけるケアの理念と実践に関する多元性の探求」研究代表者
2024年4月〜現在 日本災害復興学会 2024年度研究会活動助成「災害復興とケアの研究会」研究代表者
2024年3月〜現在 Academist Grant × AlphaDrive 研究助成プログラム(2025年3月までの予定)
2023年10月〜現在 日本学術振興会 特別研究員奨励費 (2026年9月までの予定)
2022年9月〜2022年10月 京都大学教育研究振興財団 在外研究助成
2021年4月〜2023年3月 日本学術振興会 特別研究員奨励費
2020年4月〜2021年3月 日本学術振興会 若手研究者海外挑戦プログラム(コロナ禍により有資格辞退)
2020年4月〜2021年3月 公益財団法人大林財団 2019年度奨励研究助成
2018年1月〜2018年11月 京都大学全学経費、ほか宇宙学グローバル人材育成のための海外派遣プログラム
2017年4月〜2018年3月 博士課程教育リーディングプログラム 京都大学大学院思修館プログラム
備考
詳細はresearchmapを参照
2024年11月現在