久保 裕子 (KUBO, Yuko) 

 ステイタス 博士課程

 連絡先 kubo.yuko[at]anthro.c.u-tokyo.ac.jp

 研究課題 フィリピン・メトロマニラにおける女性たちの妊娠期の喪失経験と生の様式

 研究関心領域 妊娠期の喪失、喪失対象と喪、貧困、身体、(グリーフ)ケア、空間と時間

 対象地域 フィリピン、メトロマニラ

研究内容

本研究は、フィリピンの女性たちが妊娠期の喪失の出来事をどのように経験したのか、そして、喪失した対象に対する喪の有様とはどのようなものなのかを、女性たちの語りと人々との日常的なやり取りを通して理解しようとする試みです。

フィリピンは、国民の8割がカトリック教徒であり、憲法で人工中絶が禁止されています。フィリピンにおいて、中絶行為は見つかれば法的に罰せられる違法行為です。そのため、フィリピン女性の妊娠期の喪失というと、貧困問題と結びつき、望まない妊娠がもたらす中絶のみが議題にのぼりました。自然流産や死産は何か議論される必要性はないものとされていたのです。しかし、フィールド調査を通して出会った女性たちの多くが、中絶を含む複数の妊娠期の喪失を体験していることや、中絶だけでなく、信仰では回収しきれないトラウマティックな流産・死産の経験に苦しむ女性たちがいることを知りました。

社会構造的にも、身体的にも、流産/中絶の境界が曖昧になる領域における「選択」とはなにかを捉えなおし、隘路を行くような女性たちの喪のプロセスを理解することで、フィリピンだけでなく、喪失に対する根源的な(グリーフ)ケアを民族誌学的記述を通して明らかにしたいと考えています。

研究業績

学会・口頭発表        

[口頭・査読なし]

論文                        

(査読有り)

学位論文    

「死別に伴う悲嘆の人類学的考察:プレグナンシーロスをめぐるモノ、空間、主体」 2014年度東京大学総合文化研究科提出修士論文.               

書籍等出版物  

(単著)  久保裕子 (2021) 『フィリピン女性たちの流産と中絶:貧困・贖罪・ポリティクス』, 風響社.

(共著)  久保裕子 (2023) 第10章 消費される未来、沈殿する過去, 『現代フィリピンの地殻変動:新自由主義の深化・政治制度の近代化・親密性の歪み』, 花伝社

                

調査歴

2017年06月~2019年05月 於フィリピン・メトロマニラ 

教育歴

2022年4月~2023年3月 帝京大学文学部社会学科 非常勤講師

経歴

2001年3月 早稲田大学人間科学部人間健康科学科卒業

2012年4月 東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻修士課程入学

2015年3月 東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻修士課程修了

2015年4月 東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻博士課程入学

研究助成/その他

2017年度 公益信託澁澤民族学振興基金大学院生等に対する研究活動助成取得

2017年度「松下幸之助国際スカラシップ」取得


備考

2023年5月現在