大村 優介 (OMURA, Yusuke)

ステイタス           博士課程

連絡先                   omura.yusuke[a]anthro..c.u-tokyo.ac.jp   ([a]を@にかえてください)    

研究題目               ラオスの首都ビエンチャンにおける、

 1) 男性同性愛的欲望を持つ人々のネットワークに関する人類学的研究

 2) 若手アーティストによる現代芸術に関する人類学的研究

 3) 一個人の「表現」としての生に関する人類学的研究

研究関心領域  セクシュアリティ、クィア、都市、現代芸術、個人

対象地域               ラオス(首都ビエンチャンを中心に)

(左写真)ラオス南部、パクセーにある寺院の仏像の足元での一枚。

研究内容


現在・これからの研究


◆長期調査について

 2019年2月~2021年5月にラオスの首都ビエンチャンにおいて以下の内容で長期フィールドワークを行いました。


①首都ビエンチャンを生きる男性同性愛的欲望を持つ人々(persons with male homosexual desire)のネットワークに関する調査

⇒関連:大村[2021](書籍等出版物)、2022.6.5(学会発表)、大村[2024]書籍等

②ラオスにおけるジェンダー・セクシュアリティに関わる言説、NGO等の活動動向を把握するための調査

⇒関連:大村[2022b](その他)

③首都ビエンチャンで活動する若手アーティスト(ダンサー、画家、映像作家、ギャラリー関係者)に関する調査

⇒関連:2022.11.19(学会発表)、大村[2023b](その他)

④首都ビエンチャンの都市環境、地方部出身の若者のライフスタイルに関する調査


◆博士論文について

 上記の調査を踏まえ、①の調査の中で出会った一個人についての民族誌を博士論文として執筆する予定です。

 ⇒関連:大村[2021](論文)、2022.6.5(学会発表)、2023.6.3(学会発表)


これまでの研究


◆修士論文⇒大村[2018](学位論文)

 修士課程では主に同性愛者を対象とした民族誌的事例研究を探す中でメディアの問題に特に関心を持ち、修士論文ではセクシュアリティとメディアとの関係を中心的テーマに据えました。人類学における同性愛者研究、またはセクシュアリティ研究の流れをおさえた上で、セクシュアリティ研究において欲望、身体的感覚について探究するための理論的枠組みを提示することを試みました。


◆「セクシュアリティ」概念について⇒大村[2019](論文)、大村[2024](書籍等出版物)

 その後、修士論文の一部を基に、大村[2019]として論文を発表しました。本論文は「セクシュアリティ」概念を人類学、または人文社会科学においてどのように用いることができるかに関しての試論であり、「セクシュアリティの人類学」とは、この「セクシュアリティ」、つまり「性的なもの」の意味内容を、絶え間なく探究し拡張させていく作業だと考えています。


今後の研究構想


◆人間の生の様々な場面の、感性的な側面や、他者や環境との相互作用の中で自己というもののあり方が常に変容している局面を、「踊ること」という(比喩的な)概念の下に捉える人類学的研究

◆人間の生の脆弱性、不安、弱さについての人類学的研究 cf. 大村[2021](論文)

◆「セクシュアリティの人類学」や「クィア人類学」とでも呼べる学問領域に関する探究 cf. 大村[2019](論文)

 特に「非欧米地域のクィア研究」の可能性について考え、貢献したいと思っています。

◆ラオスにおけるオルタナティブな言論・表現空間の可能性の探求

 ラオスの若者のエッセイを集めた同人誌を発行することを通じて、ラオスの若者の自己表現に関して、応用人類学 

的な実践を試みたいとも考えています。

研究業績

学会・口頭発表        

2018.3.17 「セクシュアリティの人類学を組み替えるー身体、感覚、メディアの交差から」日本文化人類学会関東地区研究懇談会、博士論文・修士論文発表会、於・東京大学

2020.12.19「フィールドにおける不安と予測不可能性に向き合い、取り入れる―ラオスの首都ビエンチャンにおけるフィールドワークでの省察」エスノグラフィーとフィクション研究会、第2回研究発表会、於・Zoomオンライン開催

2021.10.30「都市の肌触りを生きるマイノリティの性」第17回松下幸之助国際スカラーシップフォーラム、Zoomオンライン開催

2022.6.5「カテゴリーを生きる/と生きることの民族誌的記述~ラオス、首都ビエンチャンの男性同性愛的欲望を持つ人々に関する調査から~」日本文化人類学会第56回研究大会、Zoomオンライン開催・明治大学(ハイフレックス方式)( 発表資料  )

2022.11.19「ラオスにおける『コンテンポラリー(ダンス)』ジャンルの形成に関する人類学的研究」第74回舞踊学会大会、聖心女子大学( 発表資料   )

2023.6.3「個人を中心とする民族誌的記述が持つ可能性と意義~理論的考察とフィールド事例による実践的検討を通じて」日本文化人類学会第57回研究大会、県立広島大学 ( 発表資料  )

2023.12.9-10「ラオス都市部における「カトゥーイ」カテゴリーをめぐる諸相の人類学的研究~男性として男性を欲望する人々との関わりに注目した部分的な素描~」東南アジア学会第105回研究大会、筑波大学、OpenSEAポスター発表

論文                        

(査読有り)

2019「『セクシュアリティ』概念を/とともに考える」『Gender & Sexuality: Journal of the Center for Gender Studies, ICU』14:81-100. 

 こちら  (CiNii) から閲覧可能

(査読無し)

2021「フィールドにおける不安に向き合い、取り入れる――ジョルジュ・ドゥブルーの民族精神医学、ミヤギフトシの小説「ストレンジャー」、ラオスでのフィールドワーク経験を手がかりに」『パハロス』第2号、エスノグラフィーとフィクション研究会、pp. 26-36.

 ※ こちら (エスノグラフィーとフクション研究会)から閲覧可能

籍等出版物

(分担執筆)2021「ラオスの首都ビエンチャンにおける、男性同性愛的欲望を持つ人々に関する研究へ向けて」『東南アジアと「LGBT」の政治:性的少数者をめぐって何が争われているのか』日下渉・青山薫・伊賀司・田村慶子(編著)、明石書店、pp.229-232。

(分担執筆)2024「第2章 ジェンダーとセクシュアリティ:人間の性はどのように多様で複雑か」『東南アジアで学ぶ文化人類学』、箕曲在弘・吉田ゆか子・二文字屋脩(編著)、昭和堂、(予定)。

書評                        

2018 「熊田陽子『性風俗世界を生きる「おんなのこ」のエスノグラフィ:SM・関係性・「自己」がつむぐもの』」『文化人類学』83(2):297-299.

翻訳


報告書                     

2015 「異文化、他者との身体を通じた出会い―日本のカンボジア舞踊教室での観察から―」、『<作ること>の人類学 2014年度「フィールド演習」等調査報告書』、東京大学文化人類学研究室、 pp.3-18。

2021 "Research Report: Qualitative Study on Gender Recognition of Experts and Youths in Vientiane Capital, Lao PDR. (2019/2~2021/1)"  Submitted to Faculty of Social Sciences, National University of Laos.

2021 「ラオス都市部における同性愛者の自己認識、欲望、関係性の形成に関する人類学的研究」松下幸之助記念志財団国際スカラシップ成果報告書   

 ※ こちら (松下幸之助記念志財団)から閲覧可能 

学位論文                  

2016 「家族の持続と臨界~アメリカにおける同性カップルの家族形成の事例から~」(2015年度東京大学教養学部提出卒業論文)

2018 「セクシュアリティの人類学を組み替えるー身体、感覚、メディアの交差からー」(2017年度東京大学大学院総合文化研究科提出修士卒業論文)

その他    

2016 "The Other End of the Spectrum: The Outlook for the Younger Generation." EURObiZ JAPAN.  January. pp.10-13. (Elliot Silverbergとの共著)   

2022a「ACCU識字教育資料ラオス語蔵書整理に携わって」『アジア研究圖書館 東京大学アジア研究図書館ニューズレター』第7号、p4。

 ※ こちら から閲覧可能

2022b「一党独裁体制下の性的少数者による運動――ラオスの当事者運動の戦略と困難」『IDEスクエア 世界を見る眼』アジア経済研究所

 ※ こちら (アジア経済研究所ホームページ)から閲覧可能  

2023a「一党独裁体制下のラオスで性的少数者に関して研究する——三つの異なる場面からみる当事者の姿」『αシノドス』(定期購読型ウェブマガジン)シノドス

2023b「ラオスでコンテンポラリーダンスを実践する――ファンラオ・ダンスカンパニーの試み」『シノドス・アジア』シノドス

 ※ こちら (シノドス・アジア・ホームページ)から閲覧可能

2023c"Performing Contemporary Dance in Laos: Fanglao Dance Company’s Attempt" 『Forefront Asia』シノドス(2023bの英訳版)

 ※ こちら (シノドス・アジア・ホームページ)から閲覧可能

調査歴

2018.9 予備調査(ラオス、首都ヴィエンチャン)

2018.11-2019.1 予備調査(ラオス、首都ヴィエンチャン)

2019.3-2021.5 長期調査(ラオス、首都ヴィエンチャン)

2022.8-9 短期調査(ラオス、首都ヴィエンチャン)

2022.11-12 短期調査(ラオス、首都ヴィエンチャン)

教育歴

2016.7~2017.3 留学生チューター(東京大学大学院総合文化研究科)

2016.10~12 卓越ティーチングアシスタント(東京大学大学院総合文化研究科)

2021.4~2022.3 リサーチアシスタント(東京大学教養学部教養学科「フィールド演習」)

2022.4~2022.7 ティーチングアシスタント(東京大学教養学部教養学科「文化人類学基礎演習」)

2023.4~2024.3 帝京大学非常勤講師 担当科目:「情報リテラシーI」「情報リテラシーII」

※以下、ゲストスピーカーとしての講義

2021.7.3 麻布学園高等学校、教養総合授業「文化人類学の叡智」

2021.12.16 東京外国語大学、「東南アジア地域研究特論」

2022.6.7 国際基督教大学、「日常生活とジェンダー」

2022.11.17 筑波大学、「比較政治学」

2022.12.15 東京外国語大学、「東南アジア地域研究特論」

2023.5.16 武蔵大学、「文化人類学概論I」

2023.5.18 国際基督教大学、「日常生活とジェンダー」

2023.12.7 筑波大学、「比較政治学」(オンデマンド講義)

2023.12.7 東京外国語大学、「東南アジア地域研究特論」

経歴

2012.4 東京大学教養学部入学

2016.3 東京大学教養学部卒業(文化人類学コース修了、サブメジャーブログラム(相関社会科学コース)修了)

2016.4 東京大学総合文化研究科超域文化科学専攻(文化人類学) 修士課程入学

2018.3 東京大学総合文化研究科超域文化科学専攻(文化人類学) 修士課程修了

2018.4 東京大学総合文化研究科超域文化科学専攻(文化人類学) 博士後期課程入学

2019.2-2021.1 ラオス国立大学社会科学部訪問研究員

2022.4-2024.1 日本学術振興会特別研究員(DC2)

2022.5- 東京大学附属図書館事務補佐員

2023.4- 帝京大学共通教育センター非常勤講師

研究助成

2017年度松下幸之助記念財団国際スカラシップ奨学生(題目:「ラオス都市部における同性愛者の自己認識、欲望、関係性の形成に関する人類学的研究」)(支給期間:2019.2-2021.1)

2021年度りそなアジア・オセアニア財団個人研究助成(題目:「都市における自己変容の経験としての芸術実践:ラオスの首都ビエンチャンにおける、若手アーティストに関する人類学的研究」)(支給期間:2021.4-2023.3)

2022年度採用日本学術振興会特別研究員(DC2)研究奨励金(題目:「ラオス・首都ビエンチャンの男性同性愛者のネットワーク形成に関する都市人類学的研究」)(支給期間:2022.4-2024.1)

その他

2019年頃からラオスの首都ビエンチャンにてコンテンポラリー・ダンスを学び、実践するようになりました。踊り手としての活動を上で述べた調査活動にも活かしながら、ダンサーとしての活動も断続的に行っています。

出演履歴

2019.12.16-17 Laura Wernly(振付・演出・出演) "BANOÏ" @Fanglao Blackbox (ラオス、首都ビエンチャン)出演

2021.3.27-28 Noutnapha Soydala (振付・演出)"Kid Hod" @Fanglao Blackbox 出演

2022.12.1 Olé Khamchanla(振付・演出)"Not Knots" in Fang Mae Khong Dance Festival @Fanglao Blackbox 出演(ソロ作品)

2022.1210 同上 "Not Knots" in It's OK fest by Wecare @ Institut Français Laos (ラオス、首都ビエンチャン)出演(ソロ作品)

"Not Knots" (2019~)

2019年12月にフランスで活動するダンサーLaura Wernlyさんがラオスで実施したワークショップに参加した際の即興での動きの映像からLauraさんが作成した動画作品です。

2022年にOlé Khamchanlaさんの演出で実現した私のソロ作品は、この動画のコンセプトを発展させたものです。

備考       2024年1月現在